地表のおよそ70%は、海洋などの水に被われています。
この豊かな水から進化をとげ、地球上には百数十万種におよぶ生命が誕生。大自然の持つ雄大な水サイクルによって、動物や植物がそれぞれの生態系を形作り、繁栄してきたのです。
しかし、他の動植物と同様に自然の水サイクルの中で進化してきた人間は、なぜか生物が生存できないほど海岸や河川を汚染し続けてきました。
自然の水サイクルは、一度壊れてしまうと二度と元通りにはなりません。子孫へ豊かな環境を残すためにも、地球規模で水の有効利用について考えていかなければならない時期にきています。
日本は、周囲を海洋に囲まれた島国として、山河の多い山紫水明の国として、清浄な水が豊富です。現在、都市の水は、河川水や地下水を利用した上下水道用水により、まかなわれています。上水道の普及率は100%。都市の水供給施設は、なくてはならないものです。
同じように、下水施設も私たちの暮らしに欠かせない重要な要素のひとつ。下水道をはじめ、工場、事務所、ビルの中水道、除害処理施設による高度処理技術がなければ、河川は汚染物質であふれ、それを上水に変換することもできなくなり、飲み水がなくなってしまうという事態にもなりかねません。
命に関わる水は、その水にまつわる文化と暮らしも支えているという認識を、新たにしていかなければならないでしょう。
これまでの下水道整備では、市町村がその行政区域内のし尿・雑排水・雨水を処理するために設置・管理する公共下水道や、市町村と都道府県が共同で設置・管理する公共下水道、市町村と都道府県が共同で設置・管理する流域下水道の建設に比重が置かれていました。
しかし、今後は、個人レベルでの水処理の重要性が高まっていくでしょう。そのために、個人浄化槽、し尿と家庭用雑排水を同時に処理する合併浄化槽、簡易処理施設である『コミプラ』といった多様な処理システムを採用した下水計画・建設を進める必要があります。
さらに、一度使用した水も大切な水資源として積極的に活用すること、併せて汚水も排出者が定められた一定基準まで安定してきれいな元の水に戻すという『責任思想』の定着がポイントになり、処理の困難な油分やBODなどを取り除き、下水道にかかる負荷を軽減する除外処理技術は、極めて重要です。
処理水・雨水を含めた「節水・再利用・自然還流」を一体として考えるとき、処理水は貴重な水資源としてよみがえります。水処理の重要性は、年ごとにあらゆる領域で増してくるでしょう。